COSMIC CUTEさんの「グリムガーデンの少女」感想です。
『グリムガーデンの少女』を応援しています!


この作品は、2013年7月26日(金)発売……ということで、これまた積んでしまっていました。

が、はじめにお伝えしておくと、すごくいい作品です。
どうしてこれが注目されていないのか、不思議なくらい。
クリア後の今は、オススメしたいなと思うほどです。
プレイしていない方はぜひ、体験版から。

どんなストーリーだったかといいますと。

飛鷹冬児は”グリム”能力者を捕らえる捕獲部隊”回収班”だったが、
保護監督官として、グリム能力者更正施設”ガーデン”を訪れる。

グリムは、脳機能障害のひとつとして発現されるといわれる。
現実を変えてしまうほどの強い願い。
それは、様々な事象を発生させる超能力のようなもので、
多くは、人の隠された欲望や悪意から生じるため、
発現してもコントロールが効かず、周囲に被害を与えることから、
グリムが発現した者は”魔女”は、
捕獲、収容され、ガーデンで能力訓練を受けるのだ。

冬児が訪れたのは、保護監督官を務める……のは表向きの理由。
社会問題化している魔女の増加により、
声高に弾圧する派閥は、公権力にも増えている。
街では、忌避される魔女に暴行を行う”魔女狩り”が起きている。
それらに対抗し、魔女にも人権を……そういって立ち上がった”樫の枝”という魔女支援組織。
罪を犯した魔女でさえ、保護して大きくなった集団の頭目とされる人物。
その妹が、この度ガーデンに収容されたのだ。

姿を見せない樫の枝のリーダーだが、接触の恐れがある。
冬児は、潜入捜査のためにガーデンへ入り、グリム保持者の教師を務めるのだった……。

OP曲はeufonius、riyaさんで「revelation」。

さて、それでは感想です。

COSMIC CUTEさんもあかべぇブランドの一つですので、
システム面については問題ありません。
システム画面についても、作品カラーを踏襲していますので、雰囲気があります。
そこがまず素晴らしいです。

雰囲気といえば、やっぱり音楽。
そしてグラフィックでしょうか。

選択肢をみていても、内容はそうでもないのに、
選択肢デザインのせいで、妙に緊張感がある。

OP曲も、印象的ながら疾走感を残しています。
BGMもそうですが、ピアノや弦楽器を中心に、かなりシックな曲調のものが多いです。

おかげで、驚くほど世界観が伝わります。
どこか退廃的な、秋冬の寂しさを感じさせるくらいの、
シビアな現実感があります。
空気で冷えたコンクリートの冷たさ。そういうシビアさです。

魔女として収容された彼女たちの、社会が向ける厳しさとでもいうのかな。
これらは、体験版でも味わうことが出来ます。

その中でも、担当魔女のフォローをとことん行う主人公。
ここまでフォローしてくれるなら懐くのも無理ないな、って思えるところまで、
頑張ってくれる主人公がいいですよね。


さて、ルートロックはないようですが、
それでも、由真、千歳、桜子、白雪、ルナ……という形で進めるのがお勧めです。

各ヒロインたちのルートは、それぞれ解決しているのですが、
次のルートなどで、そのルート上にあった事態、
ないし人物の、別な面を見ることが出来ます。

別な面ですが、大きく見れば事態の一貫、グリムとグリムに苛まれた彼女たちを巻き込む、
大きな事態である、というのが非常に巧い。

その中には、主人公が追い求め続ける存在もあります。

「……それが、お目当てですか?」
楠木由真(奏雨さん)

共感のグリム。
自身の意志とは無関係に他者の感情矢記憶を、映像や声として読み取れる。
発症した時期、コントロールできずにそれらを受け続けたせいか、心神喪失状態にあったという。
コントロールはできるようになったものの、
現在でも他者を寄せ付けないで過ごしている。

その能力の汎用性からか、外部活動において、捜査協力も行っている。

収監者である彼らにも、当然血縁者があります。
ずっと会いに来なかった父が、突然面会に現れる。
過去、父は、ずっと由真と母を放っておいて仕事に出ていた。
そのことを、由真は……。

シナリオボリューム、事態としては小さいものの、ものすごくまとまっていますね。
心のつながり、相手が何を感じているのかすら読み取れる共感のグリム。
囚われていたこと。
グリムの外にあった事実……面白いです。


「……それって、今からでも間に合うのかな……?」
朝比奈千歳(美月さん)

幸運のグリム。
将来を期待された陸上選手だったが、グリム発現により、その将来を失った。

主人公が率いる3人の中では、一番明るいキャラクタ。
そして、体験版では一番成長が必要だった存在。
その幸運は、周囲から奪った運。

体験版以降の共通部分でも、相手に勝ちを譲るシーンなどがあり、
後からそのシーンを思い返して、なるほどな、と。
本当に乗り越えなければいけないこと。
やりたいこと。

しかし、成長し、ただ純粋に幸運をもたらす羽を作れるようになった頃から、
千歳の腕には、陰惨で毒々しく、蝕まれているような黒いアザが……。
そして、千歳にある訪問者が。

偏見もなく最初から周囲と仲良くしようと努められる、その明るさには、
主人公も大分救われたのだと。

このシナリオで、この作品が、単純に終わっていかない作りであることを示したと思います。

「苦しくなったのは、それからだ――」
和泉桜子(有栖川みや美さん)

影のグリム。
桜子の感情が具現化したような鋭利な刃で、実の家族を傷つけたという。
和泉の家は、由緒ある古武道の名家、会神館流であり、
政府高官の護衛から護身術の指導まで行っている。

桜子の素質は良く、次期当主としての声もあったが、女性が当主というのは異例のこと。
そんな中、行われた認定試験の一つで、グリムを発現させてしまったため、収監。

体験版で、なぜ収監になったのか問われ、暴走してみせた、影のグリムを持つ桜子。
手に入れた外出許可を、自宅への訪問に使う。
病に倒れた父のことが心配だったからだ。
父は衰え、少し記憶もあやふやなところがあるようで、自嘲を漏らしていた……。

これがなかなか、グリムとその社会を見せてくれる、いい展開でした。


「それも……力が弱く、意味がないからだと思います」
白雪(藤咲ウサさん)

消失のグリム。
雑用の腕章をつけた、ガーデン代表桐原女史のサポート。
魔女は、管理者からグリムの使用許可が出ないと使うことが出来ない。
管理者の制御キーは、グリム抑制剤や、電流などで魔女を鎖に繋いでいる状態にある。
白雪の管理者は、桐原女史。
そして、白雪にはガーデンに入る前の記憶が無い。

ある夜、外に抜け出す白雪を見つけ、後を追うと、
野良狸に餌をあげていた。
が、それは、ガーデン実験施設の実験動物だった…。

ここで、ガーデンの暗部ともいうべきシナリオ。
白雪だけでなく切原代表の過去も知ることが出来ます。

それはそれとして、切原代表と仲良くなるのは別に選択肢もありますけどね!

この施設にいるのだから普通ではない、と、体験版でも少しだけ記述されていましたが、
基本的には普通の子に見えます。
だからこそ、驚くほど無力で、状況に流されてしまいがち。
体験版で見せた飄々とした雰囲気は消えてしまう。
それは、消えた記憶と関係があるわけで。

「――ダメ。こっちにこないで」
ルナ(水崎来夢さん)

冬児が、夜の街で出会った不思議な少女。
何らかのグリムを所持した魔女であるように見えるが……?

体験版をプレイして、面白いとは思ったのですが、
それがきちんと継続されているかどうかわからなかったんですね。

ところが、最終話まできちんとしてました。
さすがです。
最終話でも、それまでの価値観が変わる展開があったりして。

それだけではなくて、どんでん返しレベルの仕掛けもあって。
その仕掛けは、ひとつではないのです。

この方、すごいですね。
よくこんな見せ方を。よくこんな設定を考えたものです。

きちんとした敵を用意する。
そこがはじまりで、おわり。
物語の鉄則に沿っています。感情をグイグイ引っ張っていく。

なんでしょうね。かなり面白いサスペンス映画のような。
(なので絶対ネタばらししません)

最終話は、主人公にやっとフォーカスが当たります。
今は飛鷹。昔は天霧という名だった冬児。
失ったものは、5年も前のことで……。

この主人公は、超常の力があるとか、
超越したわかりやすい力があるとか、そういうキャラクタではありません。

代わりに、見捨てません。
魔女として迫害される彼らを。これは、体験版で見せていますね。

本当は、暗い感情をかさぶたで封じながら。

最終話でルナに見せた姿勢は、夜回り先生かと思うほど、語りは穏やかです。
ヒューマンスキルと呼ばれるものでしょう。

そこがすごく、カッコイイ。

その主人公を前に、物語は、全ての登場人物の感情を吐き出させる……。

グラフィック面はもう少し何かできたかもしれないなと思います。
キャラクタがかわいらしくないとか、そういうことはないのですが、
もう少し外連味があっても良かったかなと思います。
たぶん、画面で手を取りにくいと思われた部分があるんじゃないかと思います。

決して原画家さんが悪いということでもない。
強いて言えば、彩色と原画タイプのマッチングかもしれません。

ただね、ラストシーンの横顔、すごくグッときました。
駆け寄っていくのが分かる……。

世界は優しくなんかない。
ほんの小さな可能性かも知れないけれど。
確実に、希望は残されている。
――願わくば、君に幸福な人生を――


企画、シナリオの飯田和彦さん。
すごい。ただすごい。

COSMIC CUTEさん、「LOVESICK PUPPIES」といい、いい作品に恵まれていますね。
実は凄いブランドさんなのでは?
グリムガーデンの少女 -witch in gleamgarden- 初回限定版
グリムガーデンの少女 -witch in gleamgarden- 初回限定版


どうやらパッケージ版はプレミアがついているようですね。