ウグイスカグラさんの「水葬銀貨のイストリア」体験版プレイしました。
ウグイスカグラ『水葬銀貨のイストリア』
ウグイスカグラさんの新作は「水葬銀貨のイストリア」。
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海上に作られた人工島、アメマドイ。
澄み渡る瑞々しい町並みは、水の美しさを建物に取り入れたもので、
珍しい景観は観光名所にふさわしい。
カジノ・レトワール、アミューズメント施設ミエルなど、娯楽施設も備えている。

茅ヶ崎英士は、河水冠学園に通っているものの、居場所がない。
クラスにいても誰からも話しかけられることは無い。
昼食は屋上へ続く階段で食べる。
ついているのは”ドブネズミ”という呼び名。

仕方ない。
父は、英士と母を捨て、
その上で、適当に、ただの思いつきで、誘拐をしたのだ。

その子供。それは孤立もする。

慕ってくれる幼馴染みがいる。
煤ヶ谷小夜と一時期家族だった。
けれど、その縁は、あるきっかけで絶たれた。
小夜は未だに家族と、呼んでくれては居るが、それを頑なに断っている。

断らなければ、いけないのだ。

妹がいる。
茅ヶ崎夕桜は、小夜とも仲が良い。
だけれど、小夜と違い、夕桜は兄のことを、英士のことを慕ってはいない。

ある日のこと。
いつも通り、クラスのグループ分けから爪弾きにされた英士は、
クラスメイトの女の子が、創部のために部室を返してもらおうと、先輩に訴えているのを見かける。

しかし、相手が悪い。
久末病院の役員を父に持った、学園の問題児。
学園の教師すら、その問題児を排斥できない。
この島では、久末病院とは、そういう存在だった。

その問題児が持ち出したのは、”神経衰弱”で勝負すること。
勝てば部室を得るが、負ければ負債を背負う。

その勝負に、割り込んだ下級生の女の子がいた。
「わたしは、負けない。あんなやつらに絶対負けないから」
ヒーローを、正義を旗に立つ少女に、英士は思う。

臆病者の自分は、今日見たことを、忘れようと。


これは、仄暗い水の底に生きる、茅ヶ崎英士が、みんなの笑顔を願って、
いや、底なし沼に浸かった、茅ヶ崎英士では、誰かの幸せを願って、
そして、独り消えていくかもしれない……、そんな物語。
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体験版は、1.25GBでした。

体験版、相当なボリュームでした。
汐入玖々里との再会で終わるくらいかなと思ったのに。
物語がどんどん進行してしまって、ここから先はどうなるんだ、というところまで。
半分くらい楽しんだんじゃ無いかと、それはそれで不安になります。

その内容ですが。
これまでとちょっと違った作品に感じます。
でも、素晴らしく期待の高まる体験版でした。

最初から、それなりの輪の中に居るから?
いえ、そうではなく。
すっごい、なと。

全体的な作品クオリティとして、グレードがあがっているんですが、
それもびっくりなんですけれども、そうじゃなくて。

方向性が全く違う作品なんですよ。過去作と。

学園は登場しますが、単なる学園モノではありません。
間違いなく英士のいる位置であるとか、そういうことを伝えるためのものです。
もしかしたら、この先。
築き上げたモノが、崩されていく場でもあるのかも、しれません。


何より。
ひりつくような緊張感。
茅ヶ崎英士が体験版中に見せた神経衰弱は、
画面のこちら側まで、緊張させきってくれました。

英士の勝負のタイミングは、2度。

ただ、その緊張の場面でも、テキストミスが見られます。
そこは緊張を削いでしまいますね。
ミスリードを狙ってやっているところにも、少し混乱が見られます。
というより、ミスリードのところは、もう少しだけ上手くやって欲しいと思うんです。
でも本編発売までにはなんとかなるはず。


それと、登場人物たちの事情が色々と入り組んでいくんですね。


英士には、自覚がありながら、でもそれしか取れない手段を用いて、
だからこそ苦しいけれど、でも、嘘をついてしまう。
苦しいとは、言わない。言えない。
我慢強いのではなくて、嘘ばかりだから。
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「あなたは、嘘つきだけれど、嘘はつかれたくないのね」

ある意味、人質を取られている状態。
だから、取れる手段は限られる。
人質を守るために、嘘をつく。
今はまだ、言えない嘘だから。
今明かしたら、何もかもが無くなるから。


その採った手段は、道楽家、八椚紅葉(藤崎紗夜香さん)に隷属するしかないということ。

その指示通りに動き、その指示通りに役目を果たす。
八椚紅葉は、道楽家。
ただ、悲劇が見たいだけ。
そのためなら、なんでもやってのける。

人も使うし、金も遣うし、いくらでも、いくらでも……。
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違い、というのは。
これまでの作品と違い、ぐいぐいと押してきているんです。
音楽面が。

びっくりしましたね。ここまでピアノで強烈に場を押すこと。
そして、タイトル画面の曲。
これは恐らく主題歌「アズライトの棺」のインストverなのだと思います。
静かなピアノの入りから、大きく展開していくその曲は、
これからの物語を予感させてくれるようです。
歌が入った時にどうなるのか。
そして、作品とのマッチ度合い。期待が高まりますね。

確かに、「紙の上の魔法使い」でも、近い方法を採っていたと思います。
でも、ここまでではなかったです。

声優さんたちの演技がまた、凄まじくて。

過去作でもそうでしたが、
声優さんたちに、本当の演技を求めている作品だなぁ、と感じます。


「……いつか、自分の素敵なところを自覚できますように」
煤ヶ谷小夜(御苑生メイさん)。

過去、身体が弱く、治療のために久末病院にいた。
その治療費を稼ぐため、小夜の父は……。

幼い頃に英士たち出会って、義理の兄妹として過ごした時期がある。
その頃から、今でも、変わらず英士を兄と呼びたがっている。

最近は、英士が部活に関わっていることが気になる。
それが進藤和奏(ヒマリさん)という女の子だというのが。
さらに、英士の家に転がり込んだらしい、別な女の子がいることも。

上品でありながら、凄まじく慕っているのがよく分かる演技。
紅葉の仕向けで、会わされた時の小夜とか、本当にすごいですよね。
あと、英士に冷たくされてこわばった時とか。

画面に出てくると、少しほっとします。


「こっちを引きなさい。こっちが、正解よ」
汐入玖々里(くすはらゆいさん)

夜の街で、ある所から逃げてきた少女。
ゴミ箱にはまっているところ、英士と出くわす。
そこから、英士に匿われる生活に。

再会した時、すごく救われたような気分になりました。
ただ、一時の安堵でも。

小夜に対するライバル心は、どこから来ているのか……。
英士をいつから知っていたのか、気になりますね。

夕桜とは違い、ストレートに引き留めるところ、すごくよかったです。


「夕桜は、構ってちゃんなんだよ。構ってくれないと、寂しくて死んじゃうの」
茅ヶ崎夕桜(秋野花さん)

手料理を振る舞うタイミングって、
直接言えないけれど、そんなことしなくていい、だから行かないでくれ、ってことでしょうね。
そして、どこかで何かを諦めてしまった。
だからこそ、今はそんなに軽く、明るい――。

どこまで知っているのか。
知らなかったとして、それに直面したとしたら。
その時は、どんなふうになってしまうのか、あるいは何をぶつけてくれるのか。


「夕桜は、本当に英士先輩のことが嫌いなんだ……」
小不動ゆるぎ(桜似あかりさん)

作品の中では、清涼剤です。
彼女だけは、折れようとしても、折れないでいてくれる。

けれど、体験版の最後で、本当に折れてしまっているかもしれないな、と少し気がかり。

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現在のところ、テキストミスだけでなくて、バグもあるようです。
最後のところでセーブボタンを押すとか。
セーブファイルが埋まっている場合のみ、かもしれませんが。
その後、セーブファイルが消えてしまうという事態に。

最新のタブを表示しないとか、バックログジャンプないとか、
セーブ可能ファイル数が少ないとか、オートモードの進行時に止めるためのクリックで進んでしまうとか。
システムに不満は色々あります。

姿形を変えた英士を、どうして幼馴染みである小夜には分からなかったのに、
玖々里には分かってしまうのか。とか。

でも、それがどうでもいいくらい。


本作体験版。
運命予報をお知らせします」。
あの体験版をプレイした時よりも、期待がはるかに高いです。
(ちなみに「運命予報をお知らせします」は、体験版では違和感を差し込んで、
 本編プレイして凄まじかったタイプでした)

ああ、絶対買おう。
そして、早めに楽しもう。


いまは誰一人、幸せでは無いのだけれど。
アメマドイに流れるその涙が、歓喜でありますよう。

そして、その時は。
アメマドイにから失われた涙が、取り戻せる時であるよう。


2017年3月24日(金)発売予定です。