シルキーズプラスDOLCEさんの「景の海のアペイリア」感想です。
景の海のアペイリア
2017年7月発売作品。

シルキーズプラスDOLCEさんの「景の海のアペイリア」は、
”恋と青春の科学冒険ファンタジー”。

体験版は二つリリースされていました。

没入型VRMMOと、それを形成するAI、時間の矢、
そしてタイムリープ。
様々な要素を盛り込んで展開する物語に、ものすごく期待をして購入しました。

それでは感想です。ネタバレはできません。


いやー、面白かったです。
体験版で、これはなかなか面白そう、とは思っていましたけれども、
ここまで密度が濃いストーリーだとは思っていなくて、
最後の最後までドンドン押してきたなーというのが、感想です。

なので、終わってほっとしたところもあります。


一方で、難しくもあるんです。
真実、かと思ったら別なことが真実。
そして更に真実……。

ネタバレができない、というのもここで、
最後の方は複雑な種明かしの上に、さらに複雑な種明かしをミルフィーユ状に重ねて、
次のステージへ進んで行ってしまう。

そのネタは、ずるくはないんだけど、考えればありそうというか、
最初から用意されていたのが分かるし、
その上で、玉ねぎの皮むきを外側からしていくみたいに、
一枚一枚丁寧に剥がしていっているのもわかる。

むしろ最後の種を仕込んで、そこから上手に皮を包んでいったのがわかるので、
すごく上手いです。

でも、結構混乱しました。
シンカーとの決着当たりで、ものすごく。
ha10

この作品の場合、リバースではなく、バックログジャンプのほうが良いですね。
謎を解説する流れを逆戻しで見ていっても分からない。

さらに、セーブファイルが少なすぎる。150は必要だったのではないでしょうか。


というのも。
謎と種明かしが主軸にはなったものの、
キャラクタたちの物語も、非常に魅力的なのです。

ヒロインは少なくとも四人いて、どのヒロインも魅力的かつ配役も良かったですよね。
キャラクタにぴったりでした。

ha13

主人公との出会いこそ最悪な形で、だけれど母思いであるため、
仲良くすることを選んだりする。
そんな桐島三羽は、口で冷たいことを言っているほうが、
どういうわけかにこやかに接してくれるのですが、寂しがりで、
いじくりまわすと「嫌いです」っていうあたりがすごくかわいいですね。
さすがの橘まおさん。

美羽のデザイアも面白かったですね。
まさかそこに重要な要素が仕込まれているとは気づかなかったです。
意味合いとしては、三重に、ですよね。
遠距離からの、銃撃で、塩基配列。
最後の最後まで魅せてくれました。

ha11

「わたし、それだけは守ろうと思ったんだ……」
セカンドの中だと、呪文詠唱がかっこいい。
だけれど、日頃はほんわりとしていて、
難しい話になると、「私には関係ないやつだ」と考えることをやめてしまう、
そんな一久遠。
この両極端なスタイルを、桜川美央さんが見事にやってくれました。

すごく必死になっているところと、なかなか見せなかった彼女の抱えてるモノには、
本当になんというか。
確かにしっかりと伏線は張ってくれていたのですけれども、
この作品、それ以外の伏線も圧倒的物量なので……。

大きな矛盾は、年月の積み重なり。
だからこそ。

ha8

「今のぼくの気持ちは、前のぼくの気持ちと関係があると思う……?」
M扱いは、イニシャルからでした。
東ましろは、最初から面白いというか、気に掛かるキャラクタでした。
家族関係が希薄そうにみえましたが、それは……という。

いやー、小鳥居夕花さんって本当に上手いですよね。
性格的にはおどおど、言って良いのか分からない。
でも、ちゃんと各ワードが聞こえて、キャラクタになっている。

最初にルートを選んだのが、ましろで、
展開に衝撃を受けて、やばたん。

ha12

「嬉しい、プラス、恥ずかしいが、照れるですか?」
アペイリア。

言葉の発し方がもうかわいい。
AIの固さも備えていて、愛でたくなる。
さすが秋野花さん。

ha9

桐島零一
主人公。パートボイスで古河徹人さんの素敵ボイスが楽しめます。
しかしその、パートボイスの箇所は、確かに見せ場なんですが、
こう、絶剣とかそういう場面だったりして。
知識と、下半身の強さに極振りなキャラクタで、
どうしてこんな両極端のバランスになっているのか……と色々考えてしまいます。

それと、シンカー、ブックマンにも音声がついていたのは、
非常に良かったと思いますね。


そうそう。
この作品の酷いところは、意外とあっさり退場させてしまうところ。
今回は本編でないので、とばかりに、電話の向こうで、とか、ニュース越しに、とか、
容赦ないな、と思っていました。
その容赦のなさこそが、これからどうなる?という気持ちに繋がったわけですけれども。


後半、いよいよ最後まで解明、というあたりになると、
トリックや仕掛け、キメの場面において、
ビジュアルにおけるインパクトが足りないかなと感じました。

例えば零一の、サードを使ったトリック。
最初、あれ、もう1発残りがあったの?と思ってしまいました。
何がどうなったのかじっくり読むと分るんですが、それはちょっと足りない。

それと、せっかくの仕掛けなので、零一が倒されてしまった、というところを、
しっかりとビジュアルで明示しておいたほうが、
またしても!転移してしまうのか?!という感じに受け止められて面白いと思うんですよね。

その他、音だけでうまく処理した、久遠の事故とかは、よく考えたなと思いますけれど、
一方でビジュアルで被害を見せたほうが良いこともありますよね。

そのほうがショッキングだからで、より惹きつけられるからですね。
ha14

キャラクタたちが「観測者は――だ」のところに直面したのって、
もう少しショッキングな明かし方してくれても良かったかなー、とか。

決してシルキーズプラスDOLCEさんのグラフィックが悪いわけではなく、
シナリオに比肩しうるものだったかというと、明らかに足りないと思うのですね。
ここは本当に難しいところですけれども。

ビジュアル面での演出、サポートはもう少し必要だったと思います。
それによっては、本当に、歴代に残る傑作にまで上り詰めたんじゃないかなぁ、と思ったりします。


それにしてもすごく良い作品です。
画面表現さえもう少し追いついていた、ショッキングに見せていたら、
5年先もプレイしてみたい作品かなと。

世の中の進化によって、物語の受け止め方が変わってくるかもしれないので。


ファンディスクの用意があるようで、
それはまた、見てみたいなと思いますね。