SAMOYED SMILEさんの「夜巡る、ボクらの迷子教室」感想です。
夜巡る、ボクらの迷子教室 2017年秋発売予定
2017年11月発売作品。

サモエドスマイルさんの「夜巡る、ボクらの迷子教室」は、
有名私学の教壇に立つもうまくいかなかった主人公が、
母のやっていた夜間学校へ赴任していく…。

そこでは、社会に上手く溶け込めなかったものたちが生徒として在籍しており、
彼女たちを卒業させることができるか……というお話です。

それでは感想です。
ややネタバレあり。




ああ、コレは面白い。
本当に面白いです。

荒削りなところはたくさんあるのですが、
それでも、キャラクタたちの設定であるとか、起きる事態が、読み応えあります。


どうやってルートに入ったのかわかりづらい選択肢ですが、
入る前からも、各ヒロインの魅力……というと表現が違うような気もしますが、
気になる存在ばかりで、どうなっていくのか、とにかく知りたかったのだと思います。

yb4

体験版との大きな違いは、やっぱり、このモノローグにあると思います。
吹き出しをクリックすると、彼女たちが何を抱えているのか、知ることが出来たりします。

本来、学生は生活の中心に学校があります。
けれど彼女たちには、別なものが中心に置かざるを得ない。
余暇で学生をしているような環境です。
そうせざるを得なかった事柄などが、モノローグに予兆として表現されています。

体験版の箇所でも追加されていますので、
製品版プレイの際には見逃すことの無いようにしなければいけません。


当初、プログラムがちょっとひどかったです。
修正パッチをあてているのですが、せっかくの感動的なエンディングなのに。
エンディングが終わった後、謎のループを起こしてしまう。
音声指示がテキストにそのまま載ってしまう。
現在のバージョンでは解決したようですが、1.2バージョンまで起こっていたことですから。


進行は、はやて、きな、りこの順になりましたが、
これがすごく良かったと思っています。

このルートでは、日和見だといわれたはやての父が、動き出すきっかけが、
もう少し何か合っても良かったかなと。
また、母に関しても、もう少し何かが合っても良かったと思います。

どんな風に嫁いだのか、どんな風にお見合いを思っていたのか。
そこを語ってあげたほうが、あの流れでも説得力を増すと思うんですね。

それこそ、どんな生い立ちだったのか、
夜間学校へ流れ着く前を語ってくれた娘、はやてのように。
そこが惜しかったかもしれません。

でも、それ以外は、何も悪いところが無い。
yb11

そして、小清水はやて、かわいいぞ。
最終的に、ストレートに好意を表現出来るようになった主人公、
藤原晴生には、とても良い出会いだったと思います。
同居生活をする、というのが、一番良い展開で、
また、良いポジションだったと思うのです。

すごく魅力を引き出せる展開なのです。
朝食の時、無防備になるというのもかわいいし、(低血圧と思われる)
こういう居候生活だと、帰宅した時に妙なハプニングが起きることが多いですが、
それも無い。
そういうのは、あくまでも本当にリラックスできそうな場所で、のみ。
ほんと、自然。
自然なんだと思います。彼女の存在が。

手を伸ばしたい、でも、最初に手を払われた。
そんな想いを抱えている、はやてらしさ。

セリフの一つ一つが、すごく染みてきます。
「……あんたで良かった」

というか、デザインした健やか牛乳さんと、
月野きいろさんの声が、とてつもなくマッチしていて素晴らしいです。

犬扱いされている場面でも、それがすごくハマっていたように思いますね。

ツン7:デレ3ということでしたが、
「は?」というセリフの強さとかわいらしさ、
猫を見て「かわいい……」とつぶやける素の部分、
強気だけれど臆病なところも多くて、失敗から伝えられないこともあって。
泣きながら伝える、というところも、なかなか。
成長していくはやてをみることができて、
そうして、落ち着いた時間、本当に落ち着いた時間を得ることができていく。
yb5

そうそう。気づいたことと言えば。
セリフ上の「……」の巧さです。
これ、本当にきちんと間を取っているんですよね。
それが、この作品にはすごく合っている。
セリフひとつをしっかり染みこませていきます。

月野きいろさん、こんなことを考えて演じていらっしゃったようですね。


ただ。作品全体で考えますと。
気づいてしまったのは、全員が全員、暗闇を抱えているので、
その闇、全員分対処してあげないと、
選ばなかったキャラクタは解決されていないわけで。
どうやって乗り越えたのかな、と少し不安になりました。
はやてだけは、一人で頑張ろうとするんですけどね。

特に、確実に傷を負っている新島きな(秋野花さん)は。
きなは間違いなく、放っておけば暗い道に陥っていたでしょう。
それくらい重たい話題をしっかりと描いてくれました。
それも、ギリギリのラインで。

また、門倉綾子(杉原茉莉さん)は、きっと誰かの助けがないと生活が危ういでしょうし、
りこ(こたつみやこさん)の抱えた闇は、解決しないまま成長すると、とんでもないことになりそう。
というか、りこのことは、本当に救えたのでしょうか。
yb7

そういう意味でも、はやてだけは自己解決が可能、という提示なのかもしれません。

誰かしか選べない。
この物語では、それが正しいように思います。
人を一人救うのには、他の人も同時に救える、なんてことはない。
そんな余力はないはずです。

でも、教師としては、すべての学徒に、
なんらかの教えや導きがあって然るべきなのかもしれません。
ここが、もどかしいですね。

やればよかったのか、やらない今の状態が良いのか。

これは、他の人のことも救ってあげて欲しいな、という気持ちからなのか。
……きっとそうでしょうね。
yb8

うん。
重たいテーマに真っ向勝負、というのは、
この作品のことを云うのでしょう。

そりゃ、荒削りです。
でも、どうやったら人が救えるのか。
そこが分からないまま描いた作品ではない、ということなんです。

何によって人は救われるか。
そこが、すごくしっかりしています。きちんと表現しています。
しかも、説得力があるんですね。

ちょっとびっくりしました。

通常、どこか問題は提起しても解決までしっかりしていない事が多いのに、
そもそも問題が重たいものだというのに、それでもしっかりしているんですね。

主人公すら、きちんと救われている。
りこのルートで、きちんと向き合うことができたのは、
胸が熱くなりますね。


だから。
エンドロールから、エンディングまで、しっかりと作ろうとしている。
エンドロール用のCGを別に用意して、彼女たちのその後とを描いてくれているのです。
作り手側が、彼女たちをきちんと見送ろうとしている、または、伝えようとしてくれているのです。

エンディングは、つい鳥肌が。
ああ、良かったなぁ……、と。

エンディング曲はルート毎に用意し、最後の最後まで伝えきろうとしてくれています。
どのエンディング曲も良いですね。
男性ボーカル曲「オートモービル」「星団飛行」すごくしっくりきます。


数年に1作と呼べそうな、稀有な作品に出会いました。
未だプレイされていない方、ぜひ。

はやてだけなんですよね。タイトル画面でのコール。
「はぁ……あいつ、もう仕事かな……」ってつぶやくの。
これがすごく、はやてらしくて。
こういう、細かい仕込みがすごく好きです。

そんなはやてだけで、5ページセーブファイル使ってしまったのも、ご愛敬。




そうそう。特典の音楽CD曲順ですけど……これはもしかして。
……というところはありますが、
ディスク盤面、説明書、サントラと、
少しずつ表情が違うとか、なんというかグッときますね。