ALcotさんの「将軍様はお年頃」感想です。
ALcot『将軍様はお年頃』応援中!


2018年1月発売作品。

ALcotさんの「将軍様はお年頃」は、新本シリーズ正統続編第四弾。
”将軍や町娘やくノ一とイチャラブする恋愛時代劇”。

統京都千世田区に住む、信行が、妹の珠樹のトラック事故を目の当たりにした……、
と思った瞬間に、場所が変わっていた。時代まで変わっていた……。
目の前には一振りの刀。刀から名を呼ぶ声。
そして、護るべき珠樹。

身体の弱かった信行は、柄を握り……。

という導入でした。
それでは感想です。ネタバレ多少あります。

さて。

ええ、面白かったです。
体験版で受けた印象よりも、すごく良かった。
さすが、宮蔵さんが「自信作」というだけのことはあると思います。

主人公、信行は、江都時代の剣士、信幸の身体に魂だけ入ってしまいます。
喋る名刀、烈斬によって解説をもらいながら、江都時代の呉服屋の番太として、
様々な事件に巻き込まれていきます。

体験版では、「かみかくし」が描かれていました。

そこでバンと見せ場で魅せて、体験版は終了、でしたが。
各ルートに入ると、これがまた、さらに良い感じなのです。

公式サイトの登場キャラクタ紹介には、ドタバタ展開がありそうな、
コミカルに書いてありますが、
本編はシナリオ重視のストーリーとなっていました。

それを見事に支えているのが、例えばキャストの良さ。

そう。男性キャラクタが押し並べて良いんですよね。
加納格道の野☆球さん。佐々木助次郎に六本木天人さん。
大口屋右京に大海原渉さん。徳河友嗣に機知通さん。逸見に九財翼さん。
烈斬に深川緑さん。刃右衛門に井出五郎さん。高俊に八汐優さん。
こう、男性キャラクタの声が良いので、とてもドラマに幅が出ているように思います。

ギャグ方面でもそうですが、ドラマとしてに強みがあります。

やー、助次郎も刃右衛門も烈斬も。
刃鳴り散らす場において、映えるんですよね。
「この命に換えても、宗春さまをお守りいたします」
「はい、残念」
「否定はしねぇよ。昔はそういう時代だった」
むちゃくちゃ格好いいですよね。だからこそ場が盛り上がる。
この作品には格好良さが必要だったので、必要でしたよね。
so11

あと、音楽。
『いいっこなしだよ』『指先に触れて』『はじめての夜』で、
しっとりしたピアノが流れるなぁ、と思ったら、名義はPeak A Soul+さん。
『おっかさんの背中』『穏やかな早起きは三文の得』での弦楽器。
かと思えば、この作品モチーフ、時代劇風の楽曲もかなり良いです。
『悪を斬る!』『成敗!』『悪の栄えた試しなし!』。面白いですよね。

ビジュアル、音楽面は本当に申し分無い。
というか、体験版の時にも思いましたが、彩色で見事に合わせているものの、
原画が違うと、受ける印象も結構変わっていて、これがまた良い感じなのです。

正直、どのキャラクタデザインも良くて、魅力的に思えています。
本当の甲乙つけがたい。
これにまた、声がとてもマッチしているセレクトで。
良く選んだなぁ、というか。

進行は、りん→宗春→義宗→珠樹と進めましたが、
これが正解だったように思います。

so9
「想いを貫くには、何かを犠牲にしないといけないのですね……」
りん(ほたるさん)

万屋おりんとして日中は活躍。掃除洗濯裁縫なんでもござれ。
ただ、非常に格安で仕事を受けていた様子。
信行の食事の世話も、金ではなく食事を一緒に取ることを代価とした。
相当な大食漢。
体験版で明かされていきましたが、実際には怪盗猫小僧であり、
請けた仕事は最後まで行うというポリシーのもと、悪事に関わってしまうことも。

ルートでは意外な展開が待っていましたが、
「やはり、旦那とワタシでは釣り合わないのでしょうか」
なんて呟いていたりんが、
「それで、自分がしているお仕事の価値を知りなさいっ」
と、珠樹に諭されたりして、少しずつ人間らしさを芽吹かせていく展開がとても良かったです。

最後あたりがやや駆け足で、ちょっともったいないと思ってしまうところも。

他のルートでも、非常に良いキャラクタでした。

それにしても、ほたるさん。
いい配役ですね。舌足らずな雰囲気も、非常にりんらしくなっていると思いました。
拗ねて見せたり、素直になったりと、良いキャラクタになりました。

so7
「ほんと馬鹿みたい。最初はからかい半分だったのにな」
徳河宗春(芽ヶ崎メイさん)

御三家である終張徳河家藩主、徳河友嗣の妹。
江都へは留守居(藩主代理)として逗留している。
巷では、歌舞伎者”あんみつ姫”として人気がある。
特盛りあんみつ”魔雲天”をペロリと食べ尽くす甘党。
珠樹たち越後屋にとって一番の上客。

体験版でも表現されていましたが、太夫から教えられた、男性への迫り方を試し、
しかし経験が浅いので非常に緊張しながらやっていることを信行にすら見抜かれてしまいます。

ルートに入ってすぐ、好意を素直に向けてくれる印象がある宗春さん。
「む~」
とむくれて見せたり、イタズラを仕掛けたり、姉としての立ち位置を持っていたり。
ライバルとも思える存在に、全く敵わないと思ってみたり。
色々抱えていて、目まぐるしく表情が変わるので、かわいらしさも良く伝わります。

義宗が理想を掲げるドリーマー、
それに対するリアリストとして描かれるかと思いきや、
そこまででもない……というのがヒロインらしさなのかもしれません。

大きな陰謀のなか、佐々木助次郎との向き合いは、
乗り越えるべき壁として描いても良かったのではないかなぁと思ったり。
あと、宗春が掴んだ自由、という感じがなんとなくしないのも、少しもったいない。

so8
「私も人の子です。よくやったねって、誰かに頭を撫でてほしいですから」
徳河義宗(花澤さくらさん)

お忍びで城を抜け出しては町民の事件を解決してしまう、
鬼州の暴れん坊こと、八代将軍。
その剣は、秘宝の雷刀成敗。柳生真影流皆伝の腕前。

御前試合で婿探しをしてしまおうという格道の画策。
それに挑む信行。
その、大会へ挑む過程と、順位が上がる毎にお互い通じ合っているところがかなり良かったですよね。
その後の展開もかなり王道を大事にしていて面白かったです。

とにかく耐性がないので、まぐわいまでいかずとも、
ちょっとしたことで赤くなるのと、
清廉さというか、他のルートでも互いを認め合うからこその関係が維持されていて、
良かったです。

まあもう、花澤さくらさんのかわいいところ引き出し系キャラクタなので、
キメても慌ててもかわいいこと。
テキスト上では「んなっ!?」となっていても、
「はふぁっ?!」という発声をしてくれていて、これが非常に良いのですね。
そして、「……余と結婚するのはイヤ?」の破壊力は凄まじかったです。

so10
「今はまだ夢を見ていたい。幸せすぎるのは怖いから。失うのは怖いから」
三衣珠樹(上原あおいさん)

呉服問屋越後屋の娘、珠に、魂が入ってしまった信行の妹。
珠は元々からだが弱く、信幸とは幼馴染みで互いに思い合っているが進展が無い。
父の高俊に借金があることから、高利貸し大口屋右京に見初められ……、
諦めようとしていた時に入れ替わりが発生。

入れ替わった珠樹は、天性の明るさで元気いっぱい。
身体が付いてこないことがあるものの、未来の知識で餡子山盛りあんみつ”魔雲天”や、
掛け売りでなく現金商売にして資金繰りを良くする方法などを導入し、
越後屋を救う……という展開はありつつも、
完全な他人になったから、関係を意識するようになったものの、
未来に還るべきか?という問いが常に横たわり、
シリアスな展開が面白かったです。

他のルートでは、キレのある脇役、ネタのばらまき役、
かつ、必ず伺いを立てなくてはならない一つの壁でもあるわけで。
それによって、他ルートでもネタキャラに収まらないようになっていました。
うまいですよね。

この作品のTrueルートであるように思える重厚さがあるのですが、
そう思わせるのは、ルートのラスト近辺ですよね。

やっぱり、上原あおいさんの妹役、すごく良いです。
ノリの良い時のスパーンと言い放つ「声が小さぁい!」とか、
「あ~、駄目だなぁ。やっぱり寂しいや。あはは」の涙声とか。
本当に物語は声に支えられているなと感じられて。

so6
そういえば、新本シリーズということで、繋がりが少し出ていました。
どこかの海底にある門とか、吉備津宮と西園寺とか。
その一角、坂上鈴鹿は美月さん。やっぱりなぁ。良いですよね。


ややテンプレ的な動きをするところもあって、そこは残念に思ったりしましたが、
全体的にすごく良かったです。
ヒロインの魅力を、キャラクタとして立体的に存在させながら、
それでいて痛快寄りではなく、読ませるタイプのものに仕上げた。
そこを軸に持ってきたのはうまいなぁ、と本当に思います。


あとね。
ALcotさん。いつも書いてますけど、セーブファイルがとにかく足りませんよ。
体験版でセーブした箇所はセーブしないようにしながら本編始めたのですが、
それでも、りんルートだけで8ページまで使ってしまっていて。
良いセリフ、見事な演技、良い場面。
あるじゃないですか。それを取っておきたいんです。
ほんと……お願いします。セーブ増やして欲しいです。

今作、快作でした。良かったです。


個人的には。
風見春樹さん×瀬尾順さんで、そろそろ一作、読みたいですよね。