Candysoftさんの「まおてん」感想です。
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2018年6月発売作品。

キャンディソフトさんの「まおてん」は、”ハチャメチャ非日常恋愛ADV”。
普通の島生活をしていると思ったら、魔王の女の子が現れた!?
島は悪魔がたくさん住んでた!?同居人までも天使だった!?というお話。

体験版では、テンポ良いな、わくわくするなと素直に思ったので購入しました。

それでは感想です。ネタバレ少しあります。



いやー、想像以上に面白かったです。
いえ、はっきりと。傑作です。

たしかに、テキストに少しクセはあります。
なんていうのかな。駆け足気味というか。
そこはもう少し描写しても良いんじゃないかなとか。思わないわけでは無いのです。

でも、そんなことが全く気にならなくなるくらいに面白かったです。
どうなるの?何を言ってくれるの?
そんな気持ちでAUTOモード派なのにクリックしたい気持ちが止まりませんでした。

魔界からの魔王来訪で、しかも天界からの来訪者もあって、一触即発。
人界は人界でトラブルメーカーは最初からいるし、さらに魔王以外の侵略者も現れる。
体験版以降も、共通ルートに尺が取ってあって、
魔界と天界に挟まれちゃった白ヶ島や三咲町で、登場人物オールスターでの騒動が楽しめます。

舞台も大きく動きます。
楽崎蓮太郎は、本当だったら三咲町と白ヶ島だけで人生が終わっていたかもしれませんが、
物語は作品世界を縦横無尽に駆け巡っていきます。
高度(?)でいえば天界へ行ったり。
魔王カリンに連れられ、新しいパフェを探しに急な1千キロ移動をすることもあります。

蓮太郎たちが生活している地元描写が活きていますね。
画面に出てこないサブキャラクタもかなり活き活きしていて、
最終的には、画面に映っているただの背景に思える馬場鮮魚店に親しみを覚えたり、
楽崎と春名という表札をしっかり確認したくなるほどです。

ネタも、今使われているネタを多数盛り込んでいるのに、全く鬱陶しいと思わない。
これはもしかしたら、ほとんどのネタを、
声のあるキャラクタに喋らせているからなのかもしれませんけど。

コミカルとシリアスのバランスが良く、ギャグの挟みどころが上手いこともあります。
直前の些細なネタもしっかり拾ってシリアスに活かしているのです。
mt5

「議題。レンタローおっぱい好きすぎ問題」
例えば、蓮太郎が巨乳好きなのは何故なのか?という男同士のネタ会話から、
性癖は印付きという示唆。さらに、悪夢の話へ移行する。
「うふふふ、助けてママーって?お子ちゃまねぇ」
こういう組み方、どれだけ考えて行っているのかは分かりませんが、
非常に自然で、緩急が感じられ、重すぎることも無く、
かつ伏線がしっかり印象づけられて読めます。

全く想定しない、方向性の違いそうな日常の話題、
ネタ、行動からの繋がりを作っているわけですね。

逆に、これは繋がっている、悪くなるだろうと散々伏線を貼ったところが、
全く悪くならないという落とし込み方も上手い。
ハッピーエンド志向のため、強引だと感じない程度のご都合設定はアリですよね。

また、冷静に見ていると、いくつもの物事が同時進行しているんですよね。
それが、見ている側に負担に思わせない程度に組み合わさっています。
で、登場人物や勢力が増えたり、付いてこれない方向けに、一旦まとめを入れたりもしてみせる。
このタイミングがうまいのは、何度もやるのではなく、共通ルートにあるだけ。
一度でまとまるよう、仕上げてあるのです。

それが単にまとめではなく、キャラクタの動きに活かしているところも、また。
とにかく全体的にテンポが良かったですね。

やっぱり、地となる作品が既にあるからなのか、異界同士のバランスが良いですね。
例えば天界ですごく大きいと思える事があっても、まとまっている感じがします。
舞台設定の懐が深く持たせてあるというか。


では、ヒロインごとのシナリオを。

mt13
「夢ではない。夢ではないぞ」
逢魔我カリン(桃井いちごさん)

その身に破壊神を封じ込めた魔界の英雄。
魔王カーリーンことカリン。

常識外れにワガママだけど、悪気は100%ない。とは、蓮太郎の弁。
ルートに入ると魅力ふんだんなところがとても良いですよね。

好意という感情も分からなければ、そもそも人を下位に見ているカリンが、
蓮太郎に対する感情を培うのも難しい初期状態。
だから、蓮太郎の身体を張った行動も全く分からない。
本当に色々なことがあって進んでいく関係です。

感覚に不意を突かれるところがとてもかわいい。
精神的に未発達なところがあるため、
一つを知って全てが分かるわけでもないし、進み方は一段ずつ。
mt11
その結果。
これまで、人界でやることなど無駄なこと、と言っていた、
体育などつまらないと言っていたカリンが、
魔力を使わず、人としての肉体のみでハードル走を行うところは、
ぐっと親しみを持たせてくれました。

始めは、全く理解していなかった。
だからハードルを魔力で飛び越えた。
努力をするということを悟り、練習を繰り返し、ついにクラスでもトップに。
「……なぜ最初から障害物を課したりするのだ。
 だが、それが楽しい。困難を突破することは本当に楽しい」
敵は手を替え品を替えていき、派生する後半のミスリードもドキドキさせてくれました。
カリンのお守り役、長良屋白蛇(広深香奈さん)ともう少し仲良くなりたかったかも。


mt14
「いいじゃない今日くらい」
地遊尼ゆうり(御苑生メイさん)

出会って半年。今では仲の良い姉弟。
そう思っていたのに、姉は強大な力を持つ戦闘部天使であることを隠していた。
そんな体験版冒頭から、他ルートでも示唆があったように、二人の過去がキーになります。

蓮太郎との出会い。仲良くなる前の演技が本当にすごいですね。
探り探りで、何か話さなきゃ、という間合いを感じます。
さらに、何かあると中二病寄りのセリフ。
さすが御苑生メイさんです。
御苑生メイさんが、こういうビジュアル、
こうやって背負うタイプのお姉さんって珍しいように思えます。
格好いいところもあるし、かわいいところも常時ある、魅力豊富な存在。

他ルートですが、蓮太郎のことを蓮太郎と呼べなくなったことが起きて。でも、
「私、まだここに住んでもいいよね」
本当にかわいいお姉ちゃんです。好き。

周囲がスタイルが良いヒロインばかりなので、唯一の弱点が存在する。
そこを攻められると、責めてなくても勝手にダメージを受けていく。
状態異常に掛かってしまいます。
急に早口になるところ、良いですよね。
mt20

このルートは、本当に到達感がありました。
描かれているのは、この作品の主眼と思えるハッピーエンド志向だと思うんです。
ここまで力強く自然に描いてあるの、すごく良かったです。

過去、酷い仕打ちを受け、恨むべきではない人物を憎まねばならなかったとして、
長年蓄積されこじれていたのだとしても。
それでも、そんな人にだって、救いが必要だと思うんです。

ただ、体験版最中に思わせぶりだった部分、
「蓮太郎は昔からそうだね」
もう既にこの時点で明確な記憶があったとすると、おかしいかな。
カレーパン好きも、幅を持たせるだけだったのかな。かわいいから良いけど。

このルートだと、地遊尼ラム(遥そらさん)のかわいいところも見られます。

クライマックスで、救ってくれる翼。すごく良かったです。
姉、なんですよね。どんな時だって。


mt17
「あ、でもひとつ忘れてんよ。ユリ姉、ヒル姉、ラム君と……あたし。忘れないように」
春名梨多(花澤さくらさん)

蓮太郎にとって、一番理想的に傍にいる女の子、とゆり姉に評されるのが梨多。
山に遮られ見えない花火に、変化の無い毎日の不満を募らせていた冒頭。
蓮太郎の近くにいると面白くなりそうな予感がする、と言っていたら、
魔王が現れて、本当にそうなってしまう三咲町。

どうしても危険から遠ざけたかった蓮太郎の行動を、
遠ざけたがっている部分だけは感じ取った梨多が、とんでもない行動に出るわけですが。
ほんと、そうまでしても一緒に居たかったのかな、と。
相手の胸倉掴んでも、隣に居て味方になってみせる。
素敵な女の子です。

やっていることは遊び感覚で、本当に危なっかしいのですけどね。
「アンタみたいなダメな子と、あたしの違いはなんだと思う?」
それでも、任せてしまえばイレギュラーだろうとアウトレンジだろうと。
何でもやって解決してしまう。
mt19

トラブルメーカーとしての突進力ある雰囲気と、デレ入った時かつ拗ねたとき。
超かわいいのは、花澤さくらさんのお陰ですねこれ。
天海雪乃さんもめちゃ良いデザインを作ってくれました。

共通ルートの後半、梨多が朝の早い時間にやってくるのとか、本当にかわいいですね。
「今回のターゲットはどん。はいこちら、楽崎蓮太郎さん」
ここボイス登録したいほどです。
”くろのしょ”を使って子供に還ってしまう。かわいいです。
さらにその後、元に戻ってから子供の時の物真似をするんですが、ちゃんと差異が生まれている。
素晴らしい。
あと、「だぁ!」という語句が、どんな驚き方をしているのかわかりませんでしたけれども、
花澤さくらさんのおかげでよく分かりました。
上手いですよね。
「どこがシリアス? なんか……昔色々あっただけでしょ?」
ほんと、トラブルメーカーなのに、
10年前からずっと、どこまでも肯定してくれる存在です。それが梨多。

だから、梨多と最初のシーンは、幼なじみならでは。
10年積み上げたものに浸しきってあって、すごく良かったです。

だから、10年ぶりの薔薇はちゃんと。ね。


mt15
「ナマイキな口はふさいじゃいまショー」
ブリュンヒルト・シュヴェスタン(桜川美央さん)

担任のヒルト先生ことジャーマンのシャーマンのヒル姉。
ほんとかわいかったなー。
表情が良いんですよね。さすが天海雪乃さん。
指定はさかき傘さんの、某高速戦艦とのこと。うんうん。

mt12
「どんな子も、どんな過去があっても、それがどんな風に育つかなんて誰にも分からないわ」
春名愛海(夢野ぼたんさん)

三咲町の聖母。三咲町の悪魔こと梨多の母なので、似た性質がある。
愛海さんの表情もほんと聖母ですよね。
表情ものすごく好きで。実は人気投票ずっと愛海さんに入れてます。
「れんたろうちゃん」と呼ぶ声が素敵。


ヒロインたちとの繋がりを作るときに、ちょっとした共感を持たせてないんですよね。
例えば食事の好みとか。
合わないものは合わないと、そこは分けてしまっている。
このあたりが萌えゲーと言って良いのかわからない作風になっているんですが、
これもすごく良いですね。
そこで合わなくても良いんですね。きちんとお互いを見ていけば。

エピソードの選び方もうまい。
カリン様がテレビで美味しいパフェの情報を見た。
連れて行け!といつものように要求してくる。
ところが、蓮太郎は見てない。
誰か知ってないかと話を振ると、クラスメイトの岸とねり(羽鳥まこさん)が知っていた。
けれど、パフェの名前もぼやけているし、場所までは見てない。
それを取りなすように、梨多が言う。
「……まあ、テレビで見るやつって、見た瞬間はおいしそーって思っても、
 店の場所とかまでは興味いかないよね」

そうだな、あるある。
そう思わせる話題の取り方なんですよね。うまいなぁ。
こういうところで小さな共感を積み上げていっている作品だと思えました。

mt18

そうだ。初回版特典でついてくるブックレット。ネタバレもありますからクリア後に。
ついインストール中ってひらいてしまうんですよね。
でも、このブックレットのおかげで、プレイ前に期待が持てました。
だってこれ、盛りだくさんでしたから。
コメントが本当に楽しんで作ってるなと分かって。
そういう作品って、絶対に満足できるじゃないですか。
プレイ前に見てしまった方も、大丈夫ですよ。そこまででおおよそ半分。
作品はもっともっと懐が深いですから。

あと、ディスク。ゲームディスクとサントラ2枚組になっていて、
ディスクケースを広げて、盤面とジャケットを両面から見て楽しめます。
裏面はサントラジャケット。んー。おしゃれ。
サントラの盤面もいい場面持ってきましたね。素晴らしい。
mt16

そういえば、このタイトル画面。
おシロさんが行儀良く押さえてますけど。
ヘタに色々見せて無くて、好感度高いです。こういうところも好きですね。


繰り返しになりますけど。
張り巡らされた伏線と他ルートとの繋がり、見せ方がうまくて、
きちんとキャラクタを好きになれる。
そして、エンディングがある。
そうなんですよね。物語はハッピーエンドであるべきですよ、やっぱり。

それが例えワンクリックの一瞬で全てが切り替わるとしても。
10年。待つのも、待たせるのも……。

いや、この作品。
Candysoftさんの傑作と呼べるかも。
確かにお店の広告にあった「さかき傘×天海雪乃の真骨頂」みたいな広告、その通りでしたね。

素晴らしく面白かったです。こんなに楽しめるとは思っていませんでした。