COSMIC CUTEさんの「love,VAMPIRE FLOWERS」感想です。
『love,VAMPIRE FLOWERS』を応援しています!

2015年5月発売作品。

「love,VAMPIRE FLOWERS」は、
”吸血鬼と人間──、恋をするつもりなんてなかった。ADV”。


修行の末に吸血鬼となった領主ハルトヴッヒは、
嵯峨黒羽の血で現代に蘇り、ハルトヴッヒ・嵯峨・グレードナーとなった。

正体を隠し、長崎市にある長海学園に学生となっている。
生きていく上で吸血は必要なく、
相手に影響のない程度の、ちょっと生気を分けてもらうだけで良い。

そんなデートを繰り返していたら、ついた渾名が”残念くん”。

日頃は園芸部として、黒羽や御浜利枝、クリスティナと農作業に勤しんでいるが、
ある日、不審者騒ぎがあった。
何の被害も出てはいないが、深夜の学園を徘徊している輩がいるらしい。
生い立ちを知る黒羽に疑われたこともあり、
園芸部で不審者を捕まえることになった。

さらに、吸血鬼のハルトヴッヒに、”花選び”の時期が訪れ……。

というような導入でした。

それでは感想です。ネタバレなし。

体験版プレイから3年以上も経過していますが、なかなかうまく進めることができていませんでした。

 
まず、システム面に大きな不満があります。
AUTOモードで読み、音声をじっくり聞きながら進めているのですが、
PCというのは何かと通知が来るものです。
他に起動するものの操作をすると、
何故か非アクティブなはずのゲームのAUTOモードが止まるんですよね。
ウィンドウモードにおいて、後ろにあるブラウザやタスクバーを触ると、
AUTOモードが止まる。
このストレスがすごかったです。
どんな時でもクリックしてはいけないと気付くのに時間が掛かりました。

これ、ロード画面を開いて、表示される最終ページから移動してしまうと、
もう最終ページに戻せないのと何か関係があるのでしょうか。

アイコンやタイトル画面はオシャレなデザイン。
センスを感じます。
lf

音楽も非常に雰囲気を育ててくれて良いです。
『The language of flowers』『晴れのち晴れ』『Walk to talk』
『okey-dokey!!』『やわらかな温度』『homie』『静かな寂しさ』『スクランブルマーチ』、
どの曲も素晴らしいです。

しかしその良い素材が彩るほど、作品そのものは良いわけではありません。
結果、5人もヒロインがいるのに、セーブファイルが余ってしまっています。


この作品、非常に難しい作品でした。
面白くなってくるのに時間が掛かり、なかなか浸らせ続けてくれない。
あっという間に面白い時間を下ろしてしまうのです。

良いところもあるんですが、全体的には不満です。

lf2
まず、シナリオ、ストーリー。
ヒロイン、多過ぎないか?と思います。
用意して、主要な物事について角度を変えて見せるというのなら分かりますが、
そうなっていない。
非常に散らかった印象です。
何のために5人いたか。共通ルート上での盛り上げのためとか、
キャラクタとしては分からなくはないのですが、
ヒロインになっている理由を感じません。

何かに辿り着くまでが、テンポが悪い部分があります。
うまく場を盛り上げてくれるところもあるのですが、ほとんどが散らかった会話。
彼女たちの日常といえばそうなのですが、
こうしてみていると、なんでしょう……ある程度年齢のいった方のティータイム、
いえ、お茶飲み話を見ているような気分になります。
魅力的に見えにくい。

主要な物事はふたつ。
ひとつは、恋愛部分。
もうひとつは、吸血鬼の部分。
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吸血鬼の部分の方が、より強く物語の主体となると思います。
復活した吸血鬼である主人公、その復活は嵯峨黒羽の血によってできたこと、
しかし嵯峨黒羽とその弟、昭人は特殊な病の予兆があり、
吸血鬼であるハルトヴッヒが追いかけても捕まえられない不審者。
そして、花選び。
吸血鬼の設定を色々と盛り込んだからこそ、わくわくしたわけです。

が、どちらも弱く、
ボリューム的にも、ティータイムのほうが主になってしまっているように感じます。

女性同士の会話の部分を見事に描いたところは素晴らしいですし、
それだけでも、なかなかない作品です。
鞘当てみたいな会話がここまで続けられるの、珍しいですよね。

その彼女たちが恋愛する理由が、ヒロインキャラクタの側にあまりなく、
ハルトヴッヒが欧風イケメンで、秘密がありそうなところもミステリアスでいい、
というような惹かれ方をしているように思うんです。
そのほうがリアリティはありますが、抱えている秘密が本物の人外であるという場合、
芯の強さを見せるほどの理由にならないと思うんですよね。
恋に恋している人は、想定外に直面すると、黙って去ってしまうのではないかと。


演出部分ももう少し強くても良いと思うんです。
ストーリー部分がぼやけてしまっているため演出が難しいところはあります。
ただ、演出でどちらかに寄せても良かったと思うのです。
キャラクタを魅力的に見せる、ための演出。
シナリオに膨らみを持たせる、ための演出。

または、より繰り返し伝えるための演出。

イベントCGだけ、立ち絵だけ、音楽だけで処理しているものが多く、
せっかく、しっかりとした地の文が綴られているのに、活かされていないです。

例えばモノローグは、音声入れても良かったのでは。
立ち絵はもっと増やす、大きく動かすとか。
会話や考えていることは面白いので、そこを楽しませるべきだと思うんですよね。
テキストだけで読ませて終わり、なのはもったいない。
画面に色々出して動かさないと伝わりにくいです。

キャラクタの印象も同じで、ヒロインの様々な面を描いていますので、
分かりやすくはないのです。
憂いや悩み、表現するのは良いので、うまくくるんであげたほうが良かったかも。

キャラクタ同士のやり取り。
同時に別なキャラクタが、バラバラの会話をしている場面が幾度もあります。
これに対し、ゲームとしての進行は、わざわざ1クリック1セリフに処理していますが、
騒いでいるときには、重ねちゃっても良いと思うんですよね。

イベントCGにもう少し力を入れても良かったのかもしれませんよね。

最初から、立ち絵はほぼ使用しなくて、イベントCGだけ、
テキストを上にかぶせていく進行の物語にするというのなら、
それはそれで良かったのかもしれませんけれども。
そうじゃない、ですものね。
ということで、画面演出にこだわったほうがより良かったとは、思います。

lf3
体験版で感じたように、この黒羽の立ち絵は素晴らしく良いと思います。
表情を綻ばせれば呼びかけに。表情を抑えれば内緒話になる。
素晴らしいデザインですよね。これは本当に良く編み出したなと思います。
指定もあったのかもしれませんが、これは原画のむうつきさんを褒めたいです。


去った恋の表現。これはなかなか良いです。
例えば、ハルトが別の誰かを選んだ。その選択によって生じる別れ。
去ったのはハルトそのものと、自らの想い。
その吐露がすごく良いですね。

また、誰かが素直に気持ちを出そうとしているところを見て、
自分の気持ちを封じ込めようとする。そんな場面も描かれます。
このあたりは本当に大事にしてあるなと思いますね。
lf6

「……恋なんかじゃないもの」
「はいはい。そういうことにしてあげる」
例えばクリスとハルトヴッヒが恋仲となり、去ったとして、
見送るのは黒羽と利枝になるわけですが、
あれは恋だったのかな、だったかもしれないなと思い返しながら少しの痛みを抱える。
すごく、恋愛物語として良い表現が為されていると思うんです。
黒羽を支えようと気遣う利枝も、そんな痛みを抱えていて。
そのことにフォーカスした物語は、面白いと思います。


だけれど、これは物語にとってスパイスでしかありません。
大事なのは、恋愛部分や、吸血鬼としての決着だと思うのです。

その選択を見守るのが、あくまでも恋を主体とした後追いの物語でしかなく、
例えば黒羽を選んだハルトのやり方を、リサがどう思うかといったことは表現されません。
これは本当にもったいないです。
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例えば、ハルトヴッヒが古き吸血鬼である理由が、なくなってしまうんですよね。
例えば、未解明の病気に嵯峨姉弟が苛まれる理由もないんですよね。
例えば、吸血鬼が複数登場する理由もないんですよね。
近くに病院がある理由も、長崎の近くである理由も、
園芸部である理由も、好きな花も。

意味のない設定には、表現する理由もなくなってしまうように思うんです。
裏設定があってこそのセリフというのは、ほんのり分かってこそ良いのも分かります。
ですが、設定したなら、それが気になるものなら、何らかの結論が付いて欲しいです。
最初から宣伝しているメイン商品は、どういう意味を持つのかは、商品の価値を左右します。

結果、この設定にもヒロインにも魅力を感じることができませんでした。
すっごく、もったいないです。

調理の仕方で化けた設定達だったと思うのですけれども。

lf5
それでもと選ぶなら。
クリスティナ・カミナニカ(星リルカさん)のストーリーが、いちばんよかったかな。